初心者から上級者まで、フルート奏者のための3種類の練習メニュー



 毎日、基礎練習をしっかりとやれば、フルートの腕前が一気に上達します。
基礎練習とはブレスコントロールやタンギング、指のテクニック等々、フルートを吹くための基本的な技術を毎日練習することです。


この記事では、仕事をされているアマチュアの方、音大を目指す学生さん、プロを目指す方用のプランを提案ますので、少しでも参考になれば幸いです。



ロングトーン


ほとんどのフルートを始めたての人が”基礎練習”として習うのは、「ロングトーン」でしょう。

ロングトーンとは、音を長く伸ばし綺麗な音を出す練習です。
ロングトーンに使われるモイーズの教本『ソノリテについて』は、フルートのみならず他の木管楽器の奏者も練習するほど有名です。

余談ですが、優れた教育者としても有名だったモイーズは旅行に行く資金を集めるためにこの教本を書き、出版社に版権ごと売ってしまったため、のちに「ソノリテについて」が世界的に有名になったにもかかわらず著作料が入ってこないため後悔したそうです。


ロングトーンの問題点


ロングトーンは音作りのための練習であり、基礎練習のほんの一部でしかありません。

吹奏楽をやっている中学生から音大生まで、ロングトーンだけをやって基礎練習を済ませた気になっている子も結構見受けられますが、毎日練習しなければならないことは他に山ほどあるのです。

例えば、タンギングやビブラート、音階練習といったことは毎日しっかりさらわないと上達しません。

そして何より、ウォームアップとして行うロングトーンは、フルートのためにあまり良い練習ではないと言えるでしょう。


  • まずこの練習をし過ぎると、アンブシュアに不必要な緊張をもたらしてしまう恐れがあります。



  • また、音作りのためや良い音を出すための練習であれば、他の練習を行った方がはるかに効果的です。


以上の理由により私の個人的な意見ではありますが、この練習はもっと上達してから徹底的に行なう練習であり、初心者のうちはもっと簡単な練習をすることをおすすめします。

何をすれば良いか


では、日課練習で何をすれば良いのか書いてゆきます。

しかしアマチュアとプロを目指す人では練習時間も異なってきますし、仕事をされていてあまり練習時間を確保することが難しい方や、学生さんで音楽以外の勉強もしなければならない方もいらっしゃると思いますので、ここで提案する練習時間はあくまでも参考程度にとどめ、それぞれの環境にあった練習をご自身で試行錯誤されたほうが良いでしょう。


毎日1時間程度の練習時間


毎日1時間練習する方のためには、以下の時間配分でそれぞれの練習をすると上達が早まるでしょう。


ロングトーン 5分
タンギング  5分
ビブラート  5分
音階     15分
曲や練習曲  30分


基礎練習関連に30分もかけるのは多すぎると思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし基礎練習をしっかりやることが上達の近道であり、また上達すればさらにフルートが楽しくなりモチベーションも上がります。

大変ですが試しに3ヶ月毎日続けてみてください。

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3時間の練習計画


音大を目指す高校生や、さらに高みを目指すアマチュアの方には、エマニュエル・パユの師匠、ミシェル・デボストの提案する時間配分がお勧めできます。


音階 (タファネル=ゴーベール4番を色々なアーティキュレーションで)40分
ライヒャートの日課練習No.2とNo.4  20分
ロングトーン、ビブラート          30分
エチュード             30分
曲、オケスタ            1時間

合計:3時間

あのパユをして、こんなに理性的な音楽家に出会ったことがないと言わしめたデボストですが、彼の著作『フルート演奏の秘訣』はフランスのみならず、ヨーロッパ圏、アメリカそして日本でも読まれています。



残念ながらこの本は絶版で、日本語版はなかなか手に入りづらいです。

復刊ドットコムから絶版となったこの本を復刊させましょう。
少し面倒ですが無料で会員登録できますので、復刻番号:42919 で復刊リクエストをお願い致します。



英語が読める方は英語版が参考にしてください。

Kindle版(英語)



ペーパーバック版(英語)



また、この『フルート演奏の秘訣 練習ノート』の付属本がありますが、こちらも残念ながら現在は絶版になっています。




タファネル=ゴーベール


音階練習のためのタファネル=ゴーベールの教本は、音大を目指すなら必須と言えるものでしょう。




まずは、この本の第4番目の音階練習を暗譜して毎日吹きましょう。
また、このタファネル=ゴーベールの第10番の分散和音の練習を毎日すれば良いかと思います。

ライヒャート




またライヒャートの日課練習はimslp(ペトルッチ国際楽譜ライブラリー)で無料でダウンロードできますので、本が欲しい方が購入されれば良いかと思われます。

ライヒャート:7つの日課練習 Op.5

エチュード


エチュードはアンデルセンのエチュードOp.15やベームのカプリースがオススメです。




これらもImslpで無料で手に入りますので、欲しい方のみ本を購入すれば良いと思われます。
アンデルセン:エチュード Op.15

ベーム:カプリース Op.26


基礎練習を録音してみることもお勧めします。
例えば毎週土曜日は基礎練習を録音する日にすれば、だんだん上達していることが実感できると思いますし、普段できていると思っていたことが録音を聴いてみると意外にできていないということに気がつくこともできます。

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音大生〜プロを目指す方へ


プロを目指す方にはこのような助言は必要ないと思われますが、少しでも参考になればと思い、一つの提案として以下の案をあげさせていただきます。

タンギング       30分
低音のアタックの練習 10分
音階、アルペジオ   1時間
トリル        10分
難しい跳躍のレガート 20分
難しいフレーズなど  30分
ビブラート      30分
スラップタンギング、ハーモニクス、重音、ホイッスルトーン、循環呼吸などの現代奏法
           1時間
オケスタ       30分
モーツアルトの2つの協奏曲
           40分

休憩も入れて合計   6時間程度


あくまでも例であり、おそらくここまで時間を取ることが難しいかもしれませんが、最低でもこのくらいは必要だと思います。
ここにさらにさらっている曲などが加算されるので、だいたい8時間程度は必要かもしれません。

オケスタとモーツァルトは暗譜し、準備なしに突然吹くように言われてもいつでも最高の状態で吹けるよう日頃から練習しておきましょう。
日本のオケのオーディションの際にはなかなかないかもしれませんが、海外のオケのオーディションや、有名な学校を受験する場合、課題に指定されていないオケスタを暗譜で吹かされることが多々ありますので、将来海外に出たいという方には今日から準備しておきましょう。

参考:ドイツ音大留学覚え書


まとめ、ポイント


アマチュアの方からプロまで、基礎練習をする際に最も大事なのは、徹底的に丁寧にさらうこと、絶対に速く吹かないことです。

自分の出した音を良く聴いてみてください。音程は正確か、美しい音色か、音の間に余計な音が入っていないかなど、ゆっくりさらうと聴こえないことが聴こえてきます。

こういう地道に丁寧な作業を続けていけば、3ヶ月後には必ず見違えるほど上達します。

ここに書いたことはあくまで提案であり、もっと良い方法があると思いますが、少しでもフルートがうまくなりたいという方の参考になれば幸いです。

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