本番で緊張をコントロールする方法〜3つのコツ

 本番での緊張しすぎることは、体や心をうまくコントロールできないことから起こります。
今回は、本番で緊張することを防ぐ方法について解説します。



はじめに


フルートを吹くみなさんは、発表会やおさらい会などで人前に立って演奏する機会があると思います。

フルートを吹くのは楽しいけれど、人前で吹くのは緊張するから嫌だなあ、と思う方もいらっしゃるでしょう。

若かりし頃の私も人前に立つことが大っ嫌いで、フルート教室の発表会があると知れば、発表会の1ヶ月前に人前に立って演奏している自分を想像してドキドキしていたものでした。

また、せっかく頑張って練習したのに本番で緊張してしまい、暗譜がとんで止まってしまったりして、悔しい思いをしたこともありました。

そんな内気な私でも20年の間に何度も人前に立って演奏し、一丁前に演奏に対する報酬をいただけるようになると、逆に今度は本番ではなくて、もしかしたらお金?が待ち遠しくなり、スケジュール帳を見て今月は本番収入がたくさんあるなとニンマリするようになってしまうのです。少々汚い話でスミマセン。

しかしそんな私もある日突然緊張しなくなったわけではなく、いろいろと試行錯誤を繰り返し、どうやったら本番で緊張しないで、練習の時のような、またはそれ以上の力を発揮できるか試行錯誤しました。

今回は、どうやったら大事な本番で緊張しなくなるか、メンタルの面や、実践的な方法について書いていきます。

その他の練習方法については こちらの記事 をご覧ください。

そもそも緊張とは何か?


緊張とは本来、身体に備わっている本能的な防衛反応で、暗い闇の中で突然野獣に襲われても身体が受けるダメージをできるだけ減らそうと、筋肉を収縮させ固める作用がありました。

不安などがあると指が回りづらくなったり、手や足、口が震えたりするのは、筋肉が緊張して収縮してしまうため、普段通りにコントロールできなくなってしまうのです。

原因


緊張してしまう要因は様々あるでしょうが、本番で緊張してしまう最も多い原因は次の3つでしょう。

1.準備不足


準備不足が原因で緊張してしまうことは、本番がうまくゆかないほとんどの原因となるかと思います。

指が回らない箇所、上手く吹けないフレーズ、いつも音を外してしまう箇所...etc.
演奏中にそんな箇所が近づいてくると緊張し、指や腕に力が入ってしまいうまく動かなくなってしまいます。

2.メンタルコントロールの練習不足


無意識に「演奏会とは緊張するものだ」と思い込み、自己暗示をかけてしまっている可能性があります。

「失敗したらどうしよう、こんなに時間をかけて練習してきたのに本番でできなかったら今までの苦労が水の泡だ、失敗したら周りに迷惑をかける」等々の不安やプレッシャーから、失敗して傷つくことを恐れるあまり緊張してしまいます。

もし本番で失敗した時に自分が傷つきたくないので「本番は緊張するものだ」と思い込むことで、失敗を緊張のせいにしようとしている可能性もあります。

3.身体の使い方を間違えている


姿勢が悪かったり、楽器の構え方やそもそも組み立て方がおかしいせいで、不必要な緊張してしまうことがあります。

ありがちなのは、身体を縮こめて前のめりになっていたり、楽器の持ち方がおかしいせいで手に力が入ったり、頭部管を内側に向けすぎているせいで口に要らない力がかかっていたり...etc.

良い姿勢でいることや普段から笑顔でいることを心がけると、反射的にメンタル面でも良い影響を及ぼすように、姿勢が悪いとメンタル面にもネガティブな影響を及ぼしてしまいます。

練習ではあまり注意が向かないことですが、あがってしまわないよう普段から気をつけることは実はとても重要なことです。

緊張しないための練習方法


では具体的に緊張の解決方法を書いていきます。
異なった緊張の原因があるので、それぞれに合った解決方法を提案してみます。


1.準備不足


これに関しては、日頃からちゃんと準備するしかありません。

曲を初めから終わりまでただ吹いていても、ある程度までしか吹けるようになりませんし、緊張しないよう自信を持つためには細かい部分を丁寧に練習していくしかありません。

具体的な練習方法は、指が回らないパッセージはリズム練習をする、基礎練習を毎日しっかりする等々です。

練習方法について書いた記事


も参考になるかと思います。

2.メンタルコントロールの練習不足


自分の実力以上のものを求めすぎたり、自分の本当の実力を知るのが怖かったり。

まずは現実にしっかりと向き合うことが、緊張をコントロールするためのスタート地点となります。

厳しい言葉かもしれませんが、プロにとっては本番で緊張して失敗してしまうことは自分の甘さ以外の何物でもありません。

緊張して音楽表現のことを全く考えられないような状態になってしまうことは、指を間違えたり止まったりするよりももっと悪いことであると意識しましょう。

緊張はコントロールできるものであり、厳しく自分をコントロールしようという意思を持つことが解決の糸口です。

本番で失敗するのは緊張のせいではなく、日頃からの音楽に対する自分の向き合い方の甘さが現れているだけです。

演奏中に集中できずに緊張してしまったのであれば、その程度しか音楽を、フルートを愛していないという自覚を持ちましょう。そして次回からもっと真摯に音楽に向き合おうと努力すれば、演奏中に人前で緊張をしている余裕はなくなり演奏に集中できるようになれます。

音楽とは本来は娯楽であり、聴衆を楽しませるものであり、かつ自分も楽しまなければなりません。

演奏中に緊張して良いのは、緊張すること自体を表現として書かれた数少ない現代音楽のみです。

3.身体の使い方を間違えている


いままで偉そうに書いてきましたが、何を隠そう私も今でも緊張することがあります。

オケで吹いていてピアニッシモの中、長い音をずっと伸ばしたり、出だしが難しい箇所があったり...そんな時突然震えがきたり、息が浅くなったりします。

そんなときは、自分の甘さを反省しつつ、幾つかの緊張をほぐす方法を実践しています。

まず効果的なことは、ゆっくりと深呼吸をすることです。
お腹の深くまでゆっくり吸い、ゆっくり吐いて、また吸ってを繰り返すと、条件反射的に緊張が和らぐそうです。

実際にどの程度効果があるかわかりませんが、深呼吸をすることで緊張がなくなると思い込むことで、条件反射的に緊張しなくなります。

これは訓練するほど上達したので、もし本番で緊張してしまったときは緊張を解くための練習だと思って実践してみてください。

すぐにはできませんが、何年もやればコツがつかめ、すぐに緊張を解くやり方がわかってくると思います。


おわりに


緊張しない一番の方法は、バッチリ準備をすることですが、常にベストなコンディションでいることは不可能です。

演奏家にとって緊張することは避けて通れないものですが、日常の丁寧な練習や、長年の舞台経験重ねることで緊張とどのように付き合えば良いのかわかってきます。

また、歳を重ねるごとに、フルートを始めた初心者の頃のような本番での緊張感は薄れてくるでしょう。

ぜひ若いうちにたくさん緊張し、緊張に対する良い向き合い方を学ばれることを願っています。

緊張は決して悪いことではなく、人間として成長させてくれる大きな糧となることも忘れてはいけません。


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