フルートの材質による音色や音量の違い

フルートの材質が違うと、音色がどのように変わるのかその特徴を説明します。洋銀、銀、純銀、14K,18K,24Kなどの金、プラチナ、グラナディラ(黒檀)のフルートの特徴をまとめてみました。





フルートに使われる材質


一般的にフルートの材質によってフルートの音色が変わると言われています。
フルートに用いられる材質は、以下のものです。


洋銀(洋白)



5金~24金

木(グラナディラ、その他)


洋銀


価格帯で3万円〜10万円程度で購入出来る入門用の楽器には洋銀が多いです。
まれにマニア向けに高価格帯のものもあります。

洋銀とは洋白のことで、銅、ニッケル、亜鉛からなる合金で、銀は混ざっていません。
洋白はサビに弱いのでほとんどの場合、銀メッキが施されています。

材質が軽く、音色が明るくよく通るので初心者向けとされています。
ニッケルシルバー、ジャーマンシルバーなどとも呼ばれることがあります。





100パーセント銀製の楽器はほぼ無く、強度を増すために純銀と言われるものにもごくわずかに金属が混ぜられているそうです。

銀は含有度により、名称が異なります。
多くの場合には、Ag925(スターリングシルバー)、そして最近はAg958(ブリタニアシルバー)が用いられますが、さらに銀の純度の高いものもちらほらあります。

ちなみにAg925とは、Ag(銀の元素記号)が92.5パーセントのもののことです。
ブリタニアシルバーAg958は95.8パーセントの銀が材質中に用いられているということです。

日本ではあまり見かけませんが、Ag900のコインシルバーでできたセルマー(アメリカ)の楽器を見たことがあります。

銀無垢のままだと楽器が黒ずんでしまうので、銀メッキや金メッキ、プラチナメッキが施されますが、まれにメッキをかけないものもあります。

数年前に、メッキをかけなくてもあまり変色しない銀が開発されたと聞きましたが、実用化されたのでしょうか。

現代のフルートを作り上げたテオバルト・ベームは銀をフルートのための理想の材質であるとしています。
オールドフレンチスクールの理想の楽器は皆銀製でした。

フルートメーカーで銀製の楽器を作っていないところはほとんどないので一概に言えませんが、音色の傾向としては少しくすみがかった独特の美しさがあります。

一流のプロはみんな金の楽器を使っている方が多いような気がしますが、フレンチスタイルを受け継ぐ方には銀製のフルートを吹いている方が多い気がします。
あくまでも統計をとったわけではなく私個人の見解です。




5金、9金、14金、18金、24金、そして最近流行っているのが19.5金のものでしょうか。
5k,9kなどと、数字の後ろにKがつきますが、これはカラット(karat)から来ています。
宝石の質量を表すカラットは、Caratなので少しややこしいです。

24金がほぼ純度100パーセントの金でできており、金に他の金属が混ぜられることにより純度が下がり18、14、9金などと呼ばれる金属になります。

錆びたり変色したりすることがないのでメリットが大きいのですが、展延性に優れ伸びやすく柔らかい金属でありまた質量も重いので、18金以上の純度の楽器を吹くには体力がかなり必要となってきます。

金の音色ですが、私個人的な意見では金の純度が上がるほど表現力の幅に富み、大きな音から小さな音まで音量の幅が大きい気がします。
また銀よりもやや細く、甲高いような音色である異が多いです。

楽器も重くなり、演奏面でも繊細かつ大胆な操作を要求されるのでなかなか大変だと思います。

14金の楽器が表現力や重さのバランスが取れており、よく売れている楽器だと思っています。

最近はやりの19.5金や、20金などは、最先端の研究によって金の理想の配分とされているそうですが、私は試奏でしか吹いたことがないので詳しくはわかりません。
とにかく爆音が出ます。ダイナミクスの幅が広い。
パウエルやブランネンから19.5金のモデルが出ています。




木(グラナディラ)



最近よく見かけるのが木でできた黒いフルートです。
これはグラナディラという重くて硬い木を使ったものです。
グラナディラはクラリネットやオーボエに使われていますが、近年、市場の流通量が減っていて質の良い木材を手に入れることが難しくなっているそうですが、フルートに使われているグラナディラはかなり高級なものであるそうです。

最近の古楽器の復興や、ジャック・ズーン、パトリック・ガロワ、アンドレアス・ブラウといった一流の奏者たちが用いている影響もあってか、かなり流行っています。

音色はまさに木といった感じの温かみのある倍音のよく乗った音色です。

木製フルートは割れることがあるので、取り扱いには慎重にならなくてはなりません。
また、管内部にオイルを塗ったりする人もいるようです。
とにかく手入れが大変です。


その他



プラチナ製のフルートや、パウエルのオーラマイトのような金と銀を張り合わせた管体を持つもの、プラスチックや合成木材、チタンなどのフルートもあります。

なかなか市民権を得られないようですが、プラスチック製の楽器などには材質のコストや加工のしやすさ、耐久性という面で将来性を感じます。
音色もなんとなく木に近い気がします。






テレマンのファンタジー第3番ロ短調を、シュヴェードラーフルート、木製、総銀製、金製フルートで吹いてみました。


材質によって音色は異なるか



音響学などでは、フルートの材質が変わっても音色に影響がないとされています。

実際にフルートの音色に影響するもっとも大きな要因は唄口の大きさや削り方、テーパー(頭部管から本体にかけての膨らみ方)の度合い、タンポの材質、反射板の形状、の順番でしょうか。素人なのでわかりませんが。

ムラマツなど、材質の違いしかモデルリストないものでも、よく見ると唄口の大きさや削り方は異なっています。
テーパーは測っていないのでなんとも言えませんが、おそらく異なっているのでしょう。


私個人的には、材質ごとにメーカーは異なってもはっきりと共通する音色の成分を感じるので、材質の違いは音色に影響すると思っています。

また、材質が異なるかというテストの実施方法も、被験者がCDに録音された異なる材質によるフルートの音を聴き、材質を当てるというものがあったので、いささかこれでわかるのかと疑問に思う点もあります。


プロのフルート奏者が見ても納得できるような実験結果をご存知の方がいらっしゃれば、情報をお寄せください。

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